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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-8
「単刀直入に聞くんですけど、最近の榛名、変じゃないですか?」
校舎から外に出て、あまり誰も通らない中庭に足を踏み入れたあたりで、皓太がおもむろに口を開いた。
「皓太がそう思うんならそうなんだと思うけど」
そう言われると確かに、寮で見かけた横顔の元気がなかったかな、と思う程度のレベルだ。だから、同室者で、行人のことを良く見ている皓太が心配するなら「そう」なのだろうと思ったのだけれど。
不満だったらしい幼馴染みが畳みかける。
「いや、だって、どう見ても変じゃないですか。なんて言うか、……いつもに増して苛々していると言うか。不安定と言うか」
「行人、俺の前だと、良い子になろうとするからなぁ」
「あぁ……そうか。そうだった」
珍しく苛立った風に繰り返してから、皓太が溜息を吐いた。
「じゃあ、祥くんに相談したりなんてしてないか」
「するなら俺よりおまえにするだろ、たぶん」
「俺にはしないって、あいつ、意地張るから」
どことなく拗ねた調子のそれに「そんなことはないと思うけど」と否定はしたけれど、分かるような気もした。
行人がオメガで皓太がアルファである限り、行人がそのことを隠している限り、甘えることは難しいのではないかと。
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