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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 3-15

「あれ、皓太」  茅野に報告に行こうと五階に上がったところで声をかけられて、顔を上げる。 「成瀬さん」 「どうした……って、そういや、さっき茅野が一年生連れて上がってきてたな。押し付けられたのか、かわいそうに」  まったくと言っていいほど変わっていない調子に、少しほっとしてしまった。あいかわらず気ままにふらふら出歩いているんだなとも思ってしまったけれど。  思えば、ふたりでこうして話すのは随分とひさしぶりだった。 「べつに代わりに点呼取っただけだから、俺はいいんだけど。荻原はちょっとかわいそうかも。今も、たぶん茅野さんのところにいると思うんですけど」 「まぁ、代わりに絞ってもらってるんだって思うしかないな。寮生委員はちょっとしばらく大変だろうし」 「大変、ですか」 「うん。茅野が取りまとめるから大丈夫だとは思うけど。忙しくはなるんじゃないかな」  なんでもないことのように言って、成瀬が茅野の寮室の扉に視線を向けた。会議室を利用していないだけ、個人的な説教という体にした、ということなのだろうか。

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