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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-10
人気のないところでする話は終えた、と言う合図なのか、皓太が足を踏み出した。一年の棟の様子も見ておこうかと付き合うことにして歩みを合わせる。
「皓太のクラスは落ち着いてる?」
一年生の棟と自分たちの棟は離れているから、特別な用事がなければ訪れることもない。それでも、漏れ聞こえてくる噂で、水城のそれは耳に届いてはいて。
「うーん、まぁ。ある意味で慣れて落ち着いてきてるかな、逆に」
苦笑気味に応じて、皓太が心持ち声を潜める。
「良くも悪くも、何て言ったら良いのかな。言葉があってるかは分からないんだけど、女王蟻って感じ。クラスの大半が、あの笑顔に骨抜きにされて、勝手になんでも献上してる」
――僕にも普通の生活を送る権利はありますから。
挑戦的に微笑んでいた顔が思い浮かんで、成瀬も思わず小さく笑った。
「皓太のクラスの大半って、ほとんどがアルファだろ」
「そう思うとすごいよね。アルファだなんだって言ったって、オメガのフェロモンに敵わないんだ」
「……そうかもな」
「まぁ、俺はちょっと苦手なんだけど。そう言うと、信じられないって顔されるんだけどさ。成瀬さんもそうでしょ?」
確信を持った問いに、否定するのをやめて曖昧に頷く。
「あと、向原さんもか。篠原さんも、苦手そうと言うか面倒くさそうにしてるし。茅野さんも。……そう思うと、成瀬さんの周りの人ばっかりだね。結構、三年生も良くあいつに会いに来てるけど」
そこで言葉を切って、皓太が廊下の奥に視線を向けた。普通科のクラスがあるところだ。数人の人だかりができている。
「あれ、――榛名だ」
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