188 / 1144
パーフェクト・ワールド・レインⅢ-13
どうかな、と微笑みかけた先で、彼らの視線が僅かに泳ぐ。
この分なら、面倒なヤツが顔を出す前に納まるかな、と。安堵し抱えた矢先、嫌な声が届いた。
「喧嘩なら俺たちの管轄だと思うんだがな、会長様」
風紀委員長のくせに、揉め事が楽しくて仕方がないと言わんばかりのそれだ。
振り返ると、風紀委員一人を連れて本尾が近づいてくるところで。
――無駄に目敏いな、こいつは、本当に。
「たかだか一年生の衝突を、おまえが仲裁する必要はないだろう」
「その言葉、そっくり返すぞ。相変わらずの依怙贔屓だな」
鼻で笑って、本尾が瑞樹たちの方を見やった。
「可哀そうだろう。おまえがそうやって、自分の寮の一年ばかりを庇うから」
「風紀がウチを目の敵にしてるから。これでちょうどバランスが取れてると思ってるんだけど」
「すごい理屈だな、それはまた」
「それに、言った通り、行人はどこかの誰かと違って、自分から喧嘩を売ったりしないから」
ともだちにシェアしよう!