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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-14

 その、すぐに喧嘩を売る誰かは、交戦的な笑みを浮かべて、行人に視線を送る。 「榛名」  行人が顔を上げる。その顔色は、いつもよりずっと青白かった。 「何を取られたって? 言ってみろよ。風紀が公平に聞いてやる」 「それ、は……」 「どうした。言えないのか? それとも、嘘だったのか?」 「本尾」  気の強いこの後輩に限って、本尾に委縮して言葉を呑んだわけではないはずだ。 「さっきも言ったとおりだ。風紀が首を突っ込むような話じゃない」  静かに言い切ったのとほぼ同時に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。どこか間の抜けた音が廊下に響いて、沈黙。  しばらくの間のあと、白けた風に本尾が方眉を上げた。 「貸しだぞ、成瀬」  貸してもらったつもりはなかったが、ここでこれ以上、揉めるつもりがないと言うのだけは共通していて。だから、成瀬も小さく笑うだけに留めた。 「ほら、とっとと中に戻れよ、一年ども」

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