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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 4-1

[4]  篠原がひとりいるかいないかで、生徒会室のうるささが大きく変わってくるのは昔からだが、律義に相手をする後輩がいるおかげでよりいっそうのうるささだ。  半分くらいは気を使っているのだろうが、残りの半分は純粋に元に戻ってうれしいのだろう。  昔から知っているが、深読みするのが馬鹿らしくなるくらい真っ当で素直なのだ。 「いやー、それにしても本当おまえ戻ってきてよかったわ。俺の仕事が完全に減った」 「篠原さん、それ少なく見積もっても一日に一回は絶対言ってますよね」 「いいだろ、事実なんだから。そもそも、一番恩恵受けてるやつがなにも言わないから、俺が言ってやってんの」 「あぁ、……まぁ、はい。そうですね」  触らぬ神に祟りなしとでもいうふうに、さっと皓太が話を終わらせている。あいかわらずの苦労性ぶりが気の毒になったが、あの男の幼馴染みとして生まれてしまっている時点で致し方ないのかもしれない。 「おまえの分はおまえがやれよ」  そもそもとして、代わりにやってやったつもりはないのだが。長居をするつもりもなかったので、そのまま立ち上がる。出て行こうとした向原を引き留めたのは、「あ」という小さな声だった。 「なに」 「いや、……わからないことがあったってわけじゃなかったんですけど」  思わず漏れた声だったのか、振り返ると、皓太は苦笑いを浮かべていた。 「俺が言うのもなんだと思いますし、そのすごく助かってるんですし、いまさらなんですけど」 「だからなんだよ」 「いや、その、なんで向原さんあたりまえの顔でここにいるのかなって。辞めたんですよね?」

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