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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 4-2

「そのつもりだったんだけどな」  俺はな、というように視線を向ければ、篠原がぎょっと首を横に振った。 「違う、違う。俺はちゃんと言ったからな、そこの会長様に」  名指しされて、素知らぬ態度で決済を続けていた成瀬が手を止めた。そうしてから、しかたなさそうにほほえむ。 「聞いたけど」 「……けど?」  嫌な予感でもしたのか、繰り返した皓太の声はいかにも怪訝そうだった。 「辞めたなんて、俺一言も公式には言ってないと思うんだけど。掲示もしてないし」 「え?」 「逆に聞くけど、見た? そういう掲示。一回でも」 「……見てない、かも」  根拠のないものを信じるな、と忠告されていた覚えはあったにちがいない。皓太が諦めたような溜息をひとつ吐いた。  多少の罪悪感はあるのか、篠原はバツの悪い顔をしていたが。 「つまり、辞めてなかったってことですか、それ」 「まぁ、手続き上は」  そういうことになるかな、とひとごとのように頷いてみせてから、成瀬はにこりと笑いかけている。まるで言い諭すみたいに。 「な? 人の噂って怖いよな。まったくの嘘のことでも真実みたいに広がるし、その逆のこともあるし」 「…………そうだね」  今度のは完全に諦めたそれだった。

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