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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 4-9

 あんなとってつけた謝罪で、なかったことになんてなるはずがない。 「そうだな。うん、おまえはそうだ」  少しの間を置いて、苦笑まじりに成瀬が頷いた。それ以外にできなかったとでもいったように。  舌打ちのひとつでもしたいのを呑み込んで、向原はそのまま背を向けた。さすがにこれ以上の話はないだろうと思ったし、なにより見ていたくなかったのだ。  引き留める声は、もうかからなかった。  本当に、なぜこういうときにばかり傷ついたような顔をしてみせるのか。いっそそれも演技ならいいのに、そうではないとわかってしまう。  昔から、そうなのだ。望んでいるときにはなにもないのに、ふとしたときに本人も無自覚な甘えを覗かせることがある。今となっては、もう億劫だった。  それがなければ、成瀬の言うとおり、もっと早くに見限ることもできたのかもしれないのに。  そういうところが、本当に嫌だ。

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