567 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 4-9
あんなとってつけた謝罪で、なかったことになんてなるはずがない。
「そうだな。うん、おまえはそうだ」
少しの間を置いて、苦笑まじりに成瀬が頷いた。それ以外にできなかったとでもいったように。
舌打ちのひとつでもしたいのを呑み込んで、向原はそのまま背を向けた。さすがにこれ以上の話はないだろうと思ったし、なにより見ていたくなかったのだ。
引き留める声は、もうかからなかった。
本当に、なぜこういうときにばかり傷ついたような顔をしてみせるのか。いっそそれも演技ならいいのに、そうではないとわかってしまう。
昔から、そうなのだ。望んでいるときにはなにもないのに、ふとしたときに本人も無自覚な甘えを覗かせることがある。今となっては、もう億劫だった。
それがなければ、成瀬の言うとおり、もっと早くに見限ることもできたのかもしれないのに。
そういうところが、本当に嫌だ。
ともだちにシェアしよう!