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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-1

[5] 「絶対、茅野さんも知ってた。信じらんねぇ」 「なにそんな怒ってんの、おまえ」  帰ってくるなり、早々。ここ最近疲れた顔で寮室の扉を開けることの多かった同室者は、今日はなぜかこの調子だ。いや、疲れ切って生気のない顔をしているよりはいいのだが。 「いや、だって!」 「だって、なんだよ?」 「……なんでもない」  おまえに言ってもな、みたいな顔で溜息を吐かれて、ちょっとカチンと来た。なら最初からなにも言わなければいいのに。  ……いや、でも、そうやって態度に出るだけまだマシなのか。  素知らぬ顔ですべてをなかったことにされるよりかは。結局なかったことにされているようという疑念には気づかぬふりで、行人は違う話題を振った。 「生徒会ちょっとは忙しさマシになったんじゃなかったのか?」 「あー……、生徒会ね、うん」  気を使って話を変えたつもりだったのだが、変わっていなかったのかもしれない。「あ」と思ったのだが、再び転換を試みるより先に、高藤が小さく笑った。 「まぁ、マシにはなったよ。そりゃね、人数が増えりゃマシにはなるよね。少数精鋭って言えば響きはいいけど、あそこ万年人手不足だから。むしろ増えるべきなんだよ、もっと」 「なんだ、その言い方」 「いや、……うん、これは前に茅野さんが言ってたんだけど。今の生徒会のシステムとかって、ほぼぜんぶ向原さんと成瀬さんがつくり変えたやつらしいから。そういう意味では、あのふたりが揃ってると、すべてが早いは早いよね」 「へぇ」 「まぁ、なんだ。中等部のときも同じ状態だったわけで、俺はそれを経験してるから。だから俺がいると使いやすいんだと思うよ。あの人たちの考え方に慣れてるから」 「へぇ」  同じ相槌を行人は繰り返した。やっぱりすごいんだな、あの人たち、とも素直に感心しながら。

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