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パーフェクト・ワールド・レインⅣ-1
[4]
「そんなもん、寮生委員会の仕事だろうが」
話があると夜半に自室のドアを叩かれて、渋々、足を踏み入れたのが茅野の部屋だ。聞き終えた話と揃っている顔ぶれに、向原は面倒臭さを隠さず吐き捨てた。
なにが、楓寮の人間が侵入したかもしれない、だ。そもそもとして、要塞であるわけでもないところだ。他寮の人間が入ることなど簡単な話だ。
茅野に柏木に成瀬ときて、自分だ。寮生委員会だけで終わらせればいいものを、何が楽しくて生徒会まで巻き込まれなければならないのか。
「おまえなぁ、向原。入られたのが成瀬の部屋だったとしても同じことが言えるのか」
「入られるようなヘマはしないだろ、こいつは」
「たらればの前提を壊してくれるな、頼むから」
げんなりと首を振った茅野を擁護するように成瀬が付け加える。
「ウチの寮内で鍵を盗まれたんじゃないのかって言うのが問題で。まぁ、ほら。最近、学園内も荒れてるから」
「だから、俺らもって?」
どちらかと言えば、風紀の仕事ではないかとも思うのだが。
「私物が盗まれてるんだから可哀そうだろ。そのせいで、無駄に風紀にも絡まれたんだし」
「あいつらに抗議するなら茅野からしろよ。俺がしても成瀬がしても意味ねぇぞ」
「だから、そう言う問題でもなくてだな」
茅野が話を継いで、切り札のように問題児の名前を出した。
「おまえだって、水城の問題を捨て置きたくはないだろう?」
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