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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-4
「だから、そう思ってた人たちは、ほっとしてるんじゃないかな。これでやっと正常に――水城が入ってくるまでの日常に戻るって」
それは、自分たちが中等部で過ごしていたような日々のことなのだと思う。刺激的なことはそう多くなかったかもしれないけれど、妙な噂が出回り続けるようなことはなく、それなりに平和で、平穏な日常。
そういった日々が、どれほどありがたいものだったのか。高等部に入学してからの数ヶ月で思い知った気分だった。
行人とは逆に、今の刺激がある日々が好ましいと感じている生徒もいるのだろうけれど。
「今までは寮のトップとその周囲が水城を全面的に可愛がってたから、内心はどうあれ追従してたって人もいると思うし。その内心の部分が露出し始めたら、空気はまた変わるんじゃないかな」
そうだよな、と改めて頷く。「オメガのハルちゃん」にばかり気を取られて視野が狭まっていたのだろうが、全員が心の底から水城を可愛がっているように思えていたのだ。
――でも、そりゃ、そうか。全員が全員アルファってわけじゃないもんな。
それに、アルファだって、それぞれだ。高藤みたいなタイプもいれば、茅野みたいな人もいる。アルファだというだけで、オメガを可愛がるとは限らない。それぞれの考え方があるのだから。
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