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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-6

 水城春弥は、行人にとって理解のできない存在だった。行人にとって隠すべきものである「オメガ性」をまるでひけらかすように入学式の祝辞で公表した同級生。  相容れるはずがなかった。同じオメガであるのに、オメガにとっての命綱である抑制剤をゲームかなにかのように盗んだことも、そうだ。  自分の管理にも問題はあったかもしれないと思うことで留飲を下げようとしていたが、あの一件がなければ、成瀬の秘密も知らないままでいられたかもしれない。  そう思ってしまうと、より一層のもやもやが募ってしまう。知ったことを後悔しているわけではない。けれど、知らないままのほうが、あの人のためだっただろうとわかるからだ。  だから――。 「あ、榛名くん」  人懐こい声に、行人ははっと振り向いた。渡り廊下の向こう側で、水城がにこにこと手を振っている。 「移動教室なの? 僕たちもなんだ」  四谷からだけでなく、近くにいたクラスメイトからも興味や羨望の視線が突き刺さってくる。四谷は、行人が喧嘩を売らないか心配してくれているだけだろうが。 「うん、……まぁ」  精いっぱいの愛想で応じると、水城がかすかに驚いたような顔になる。まともな反応があるとは思っていなかったのだろう。けれどすぐにそれは、うれしそうな笑顔に変わった。 今まで不愛想な対応を繰り返していて申し訳なかったなという罪悪感が疼きそうなほどの、無邪気な笑み。 「そうなんだね、がんばって!」

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