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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-7

 うん、ともう一度頷くと、水城が大きく手を振った。そういった人懐こいしぐさが抜群に似合う。その姿に、自分とは正反対だなと改めて思ってしまった。  行人には、ああいった人好きのする振る舞いは、愛されるような振る舞いは、とてもではないができない。 「あ、それから。よかったら、今度、僕たちの同好会に遊びに来てよ。いつも風紀にいるから。榛名くんなら大歓迎」 「あ、……うん」  ぎこちない笑顔を張り付けて応じると、水城もまたにこりとほほえんだ。そのほほえみを最後に、あっさりと取り巻きたちの話に頷きながら歩き去っていく。 「また完全に俺のこと無視なんだけど」  俺も無視されたかった、と思いながらも、はは、と行人は力ない笑みをこぼした。普段めったと使用しない愛想笑いなんてものを浮かべたせいで、どっと疲れた気分だった。  いいなぁ、俺も誘われたいのに、などと口々に羨んでくるクラスメイトたちをやり過ごして、はぁと小さく溜息を吐く。水城が主催している「秘密の薔薇結社」の集まりは、よほどのアルファでないと誘いがかからないともっぱらの噂なのだ。  わいわいと勝手に盛り上がりながら追い抜いて行ったクラスメイトの背中を見つめたまま、四谷がぽつりと呟いた。 「なんか、俺が言えた台詞でもないんだけど」 「なに」 「大人になっちゃったね、榛名。ハルちゃんに食ってかかってたのが懐かしいくらい。高藤が見たら泣いて喜ぶよ、きっと」 「いや、だって……」  しかたないだろ、と口の中でもごもごと呟く。

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