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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-8
思うところなんて、いくらでもある。数日前の朝の出来事は、さすがにまだ過去形にすらできていない。けれど――。
「俺、すごいコンプレックスがあって」
「うん?」
「その、……自分の第二の性に対して。だからそんなもの関係ないって思いたいのに、逆にすげぇ固執しちゃってるところあるっていうか。アルファなんだから、とか、アルファのくせに、とか、そいつの人格云々以前に思っちゃったりとかして」
この学園に入ったばかりのころ、高藤に対してよく思っていたことだ。アルファだから、嫌いだ。それからたくさんの時間を重ねて、アルファのくせに変なやつ、に変わった。
「でも、だから、成瀬さんみたいに、本心から第二の性は関係ないって言える人がうらやましかったし、すごいって思ってたんだ」
高藤や、茅野や、そういった人たち。けれど同時にアルファだからだろうとも思っていた。アルファだから、そんなふうに思える余裕があるんだと。でも、違った。
「その、……それで、なんていうのかな、水城は俺とはまた違うと思うんだけど、すげぇ第二の性に固執してるの、なんか悲しいっていうか、寂しいっていうか。……こんなこと言ったら、それこそまた喧嘩になりそうだけど」
「うん」
余計な口を挟まずに聞いてくれていた四谷が、穏やかに話し始めた。
「そうなのかもね。俺もさ、自分がベータだから、ついアルファが羨ましくなっちゃうし、自分ができない言い訳に第二の性を使ったりしちゃうから、そういう気持ちもすごくわかるんだけど」
そうだよな、とも、そんなものなのだよな、とも思うし、実感としてわかっている。けれど、同時に、すごく視野の狭いことなのだとも思えるようになった。その人個人を見ずに、オメガだから、だの、アルファだから、だのと言ってしまうことは。
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