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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-11

 飲み切った紙コップを屑籠に捨てて食堂を出ようとしたところで、行人はぎくりと足を止めた。玄関のほうから誰かが歩いてくるのがわかったからだ。  こんな時間に誰が、と強張っていた心を解いたのは、聞き慣れた柔らかい声だった。 「あれ、行人だ」 「……成瀬さん」  驚いたせいばかりではなく、ぎこちない反応になってしまった。けれど、階段を素通りして近づいてきた成瀬には気にしたそぶりはなかった。にこりといつもの顔で話しかけてくる。 「よかった。行人がいるってことは大丈夫だ」 「大丈夫って、門限、ですか?」  そもそも門限を過ぎたら玄関は閉まっているのではないのだろうか。窓から出入りをする人もいる、という話を聞いたことはあるけれど。 「玄関まだ開いてる時間なんですよね。だったら大丈夫だと思いますけど」 「あ、俺、鍵持ってるから」  だからべつにそこまで門限は気にしていないのだ、とも取れる言いぶりに首を傾げたのだが、違う方向性に取られてしまった。 「そうか。ええとね、茅野と柏木が持ってるのは当然なんだけど、俺と向原も持ってて。その、生徒会権限ってやつで」  そういう意味では、と言うのも気が引けて、「そうだったんですね」と相槌を打つ。それもはじめて知ったことではあったので。

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