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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 5-14

 どこか淡々としていた説明が、ふいに内緒話をするような調子に変わる。 「ちなみにね、向原は後者だけど、本尾はああ見えて前者。篠原も前者。あいつなんだかんだでまともだから。で、茅野は後者」  なんだかあまり知りたくない情報だった。特に最後は。黙り込んだ行人に、成瀬がにこりとほほえむ。 「それでね、皓太は完全に前者なんだけど、そもそもとして暴力をふるうなんてありえないっていう健全な世界で生きてるから、自分が頭を下げてでも回避すると思うよ。だから、あいつは喧嘩はしない」 「……」 「一番まともだと俺は思うよ」  だから、と成瀬が言った。行人をまっすぐに見下ろしたまま。 「大丈夫だよ、あいつのとなりにいたら」  なんだ、と思った。言わなかったけれど。俺に気を使っていたんじゃなくて、これを言いたかったのか。  素直に頷けば、この人は安心してくれるのだろうか。でも、高藤は、と思考を巡らせたところでわからなくなった。高藤は、成瀬が言うとおりで「まとも」だ。  だから、少なくともここを卒業するまでのあいだ「行人のつがい」でいてくれるのだろうと思う。でも、それは、正義感か、あるいは義務感のようなもので。だから――。

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