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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-1
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――行人は本当に高等部に入ってから急に大人びたよな。
櫻寮に配属が決まったと言って入寮前に遊びに来ていたころは、昔見たときのままの幼さが強く残っていたのに。
年月を考えれば自然なことではあるのだろうが、環境が無理やりそうさせたのではないかと考えるとかわいそうに思えて、つい手を出したくなってしまう。
それがよくないのだと再三言われているし、自分でもわかってはいる。けれどそれも、本当に終わりに近づいているのだろうと思う。
ずっと気にかけていた年下の子どもが急激に大人になっていくように感じると、ほほえましいけれど、寂しくもある。行人だけではなく、もっと昔から知っている幼馴染みもそうだ。
けれど、最近はそういった一抹の寂しさだけではなく「安心」という感覚も増え始めていた。
自分がいなくても大丈夫だと、そう。
勝手な感慨だとわかっているのに思ってしまうのは、はじめて会ったころの行人の印象がなかなか消えていなかったから、なのかもしれない。
ちょうど三年前。自分がまだ中等部にいたころ、新入生だった行人は今よりもずっと線が細くて、少女のようで、そうして触れ方ひとつで壊れてしまいそうな繊細さを、不器用な仮面の下に隠し持っていた。
それでもどうにかひとりで頑張ろうとしている健気な姿勢を見てしまったから、必要以上に手を出し続けてしまっていたのだと思う。
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