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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-2
中等部にいた最後の年。思えばあのころから少しずついろんな物事が変わり始めていたのかもしれなかった。
「本当に俺も好き好んで首を突っ込みたいわけじゃねぇんだけど」
向原が生徒会室から出て行った途端に、中等部の三年生だった篠原がそう話しかけてきた。顔もなかなかに嫌そうなそれだったが、前置きからも声からも「面倒だ」という感情があふれ出ている。
なにを言いたいのかはわかっていたが、そこまで迷惑をかけたつもりはない。だから成瀬はなんでもないように苦笑してみせた。
「なんだよ、その前置き」
「おまえら、今度はどんな喧嘩したの」
「べつに……」
「してないけど、とか言うなよな、おまえ。嘘にしても雑過ぎるだろ」
「じゃあ、逆に聞くけど。なんで喧嘩したって決めつけるんだよ。見たわけでもないくせに」
雑な反論に、篠原が「そりゃ、おまえ」と呆れ切った顔で閉まったばかりの扉を見やる。
「いきなり『成瀬』って呼び始めたら、そう思うしかないだろ」
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