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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-3

「いきなりもなにも、もともとそう呼んでたと思うけど」 「何年も前の話持ち出すなよ。一年のころだろ、それ」  うんざりと応じたきり黙り込んでいた篠原が、ぽつりと呟く。 「このあいだの、あれか」  ひさしぶりに寮であった、大きなひと悶着。答えないでいると、今度は大儀そうな溜息を吐かれてしまった。 「こんなこと言いたくないし知りたくもないんだけど」 「だから、なんなんだよ、その前置き。うっとうしいな」 「じゃあ、はっきり言ってやるけど。おまえ、なんかやらかしただろ。どう考えても、あいつらの処分が重すぎる。なんだ退学って。ありえねぇだろ」  そりゃ、まぁ、いろいろと問題のあるやつだったけど、と言いながらも、篠原は不服そうな表情をしていた。  ――こういうところ、アルファだよな、こいつも。結局。  襲われたほうに、弱い存在に、問題があって、強者の自分たちが正しいのだと、本能のようなところで思っている。 「でも、未遂だったんだろ?」  その思想をそのまま言語化されたようで、受け答えに険が混じる。 「未遂でもなんでも、されたほうの心に傷は残るだろ」 「……って、どっかで主張してきたわけ? それ」

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