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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-5

 だから、なんだ、と思ったあのときの感情が、今もまだ胸の奥にくすぶっている。  時間を置いた今でも、自分の行動が間違っていたとは思えないし、責められるべきものだったとも思えない。  持て余した苛立ちを、言うべきではない言葉に変えてしまった、とは思っているが、謝るという選択肢は、やはりなかった。  謝れば、あのときの自分が間違っていたと認めることになってしまう。 「そりゃそうだとは思うけど、頑固だぞ、あいつ。……まぁ、それは、おまえもか」  苦笑ひとつで、篠原は宥めるように言葉を継いだ。 「あいつの不言実行なところも俺様すぎて、どうかとは思うけど。おまえも独断専行だし。どっちもどっちなんだから、適当に折れて謝れって」 「どっちもどっちなんだったら、俺が折れる必要ないだろ」  そう吐き捨てると、ここまで強硬な態度に出るとは予想していなかったのか、驚いた顔をされてしまった。 「どうした、おまえ」 「べつに、……ただそう思ったってだけで」  似合わないことをした自覚はあったから、言い訳がましいものにしかならなかった。 「その、それだけ」 「意地になってるだけなら、まぁ、あれだけど、でもなぁ」 「でも、なに?」  問い返すと、言い淀むような間があった。一瞬ではあったけれど。 「客観的に見て、だけど。俺は、おまえの、ひとりでなんでもできるんですっていうその姿勢に、けっこうな問題があると思う」

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