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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-7
「だって、なんだ。信用されてねぇみたいじゃん。むなしいっつうか。あー……、まぁ、俺はあいつじゃねぇからよくわかんねぇけど」
面倒になったのか、そこで篠原は会話を打ち切った。たぶん、そのときだけではなく、はっきりと、あるいは遠回しに、何度も言われたことだった。
痛い目見ないと理解しないんだろうな、とも言われたことはあるが、残念ながらその「痛い目」とやらを見たところで、自分は変わらないだろうな、という自覚が成瀬にはあった。
理解をするということが、自分の弱さを直視するということだとしたら、なおさらだ。それは必要のないものだ。アルファである自分に、弱さなんていらないし、誰かに頼りたいだなんて依存心はもっといらない。
そう思って、生きてきた。それなのに、どうして誰も彼もが、その根本の価値観を揺るがそうとしてくるのか。
本当に、意味がわからない。それがアルファ様の余裕からくる心配りだというのなら、なにひとつとして必要がないのだと払いのけてやりたいくらいだった。
――でも、そういや茅野も言ってたな。むなしいだの、なんだの。
ついでに、向原のことを気の毒だとも言っていた覚えがある。その理由は、よくわからなかったけれど。
あの男が気の毒だというのなら、いったいどこに気の毒でない人間がいるのだとも思っていた。
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