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パーフェクト・ワールド・レインⅣ-4

「一応、俺はここの生徒会長だし。何事もなく一年が終わるなら、それに越したことはないと思ってはいるけど」 「なんだ、なんだ。おまえらしくもない。えらく遠回しな言い方だな」  本当にな、と思ったが、それ以上を突くのも面倒になって向原は言葉を呑んだ。この男に何を言っても、それ以上が返ってこない、と半ば諦めるようになったのは、いつごろからだったか。  少なくとも、もう一年は経っているように思うが、はっきりとは向原にも分からない。 「俺らしくないって、そんなに理不尽なことをしてきたつもりはないんだけどな」 「理不尽かどうかはさておいて、おまえはおまえの思うがままに突き進んでいたじゃないか」 「そうか?」 「何を言っているんだ。俺の知っているおまえなら、やれ榛名のためだ、高藤のためだと言って、あれこれ手を回すだろう。それが水城にとって良くないことでもな」  まぁ、そうだな、と。呆れた風な茅野の弁を聞きながら、向原も思った。結局、何の踏ん切りも付けられていないらしい、とも。 「良くも悪くも、おまえは優先順位をしっかり付けるタイプじゃないか。平等だなんだと言ったところで、そんなもの、そうであり続けられるわけがない」  アルファもオメガもない世界。平等な世界。中等部に入学した当初、成瀬がよく言っていたそれだ。そしていつしか言わなくなったそれ。  ――そんなものに何の価値がある。  言わなかったけれど、向原はずっとそう思っていた。  無意味だ、と。そして、思っていた通り、今こうして躓いている。

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