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パーフェクト・ワールド・レインⅣ-7

 成瀬祥平はオメガなのではないか。そんな噂が流布し始めたのは、その翌日のことだった。 「別に俺も積極的に聞きたいわけではないんだけどさ」  向原が居着いていると周知されているおかげで、滅多と誰も近寄らない屋上の戸を開いた旧友は、言葉通り面倒くさそうな顔ですぐ傍らまでやってきた。 「おまえは最近、何をやってんの」  どうせ生徒会室には来ないだろうと踏んでやってきたらしい篠原は、呆れ声のまま続けて、フェンスにもたれた、  眼下には、寮に繋がる道と中庭とが広がっている。授業を終えた生徒たちの黒い頭が小さくなっていくのを視界に置いたまま、向原は紫煙をゆっくり吐き出した。 「おまえな、それも風紀にバレたら、また七面倒なことになるぞ」 「おまえの頭の色と一緒だろ」  黙認される領域を出てはいないし、第一、あの男も吸っている。ここで吸うのは、成瀬に見られると煩いからなだけだ。気が付いているとは思うが、直接目にしない限り、何も言わない。 「それを言われると、アレなんだけどな。と言うか、話も戻すけど」  何をやっているのか、と。篠原が淡々と繰り返した。何、か。 「どちらかと言えば、何もしてないつもりだな」 「それだ、それ」 「それって?」  「良いのか、放っておいて」  それが何を指しているかは明白で。吸いさしを銜えて、一息。なんだかんだと言って、こいつも成瀬を贔屓している。

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