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パーフェクト・ワールド・レインⅣ-9
成瀬がそうであるように。自分もきっと根本的なところで何も変わってなどいない。ガラにもなく大事にしてみようと思っても、所詮ままごとだ。壊す。壊さない。そもそもとして自分の影響など受けないかも知れない。
どう転ぶかはまだ分からない。賽はまだ投げ入れられていない。
「俺は……、いや、俺が何を言ったところでおまえに響かねぇよな。べつに責めてるわけではねぇけど」
響く。どうなのだろう、とふと思う。だったらば、あの男の言葉は、自分に響いていたのだろうか、と。
「少し前の話なんだけどな、水城、ウチの寮でさめざめと泣いてたんだけど。その理由、知ってるか?」
「どうせ、成瀬だろ」
「そうだよ、どうせ成瀬なんだって。何がそんなに気に喰わないかね、水城も」
オメガだからだろ、との言葉は呑み込んで、続きを促す。聞かなくとも、おおよその想像は付くけれど。
「まぁ、なんと言うか、良くあれだけこれ見よがしに泣けるよな、と思わなくもないんだが。それに九割近い人間が引っかかるんだから、悲しい性だよな、アルファの」
「本能ってやつなんだろ、知らねぇけど」
「……おまえ、本当にそう言うところ淡泊だよな」
「馬鹿馬鹿しいだろ。オメガのフェロモンに鼻の下を伸ばしてるアルファほどみっともねぇもんはねぇよ」
「それは、おまえだから言えることだって」
上位種様、と珍しく軽い嫌味の入った口調だった。
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