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パーフェクト・ワールド・レインⅣ-10

「残念だが、楓におまえみたいなヤツも成瀬みたいなヤツもいねぇからな。仕方ないんだって。みんな、水城が可愛くて、ついでに、自分のものにしたくて仕方ねぇんだよ」 「そう言うものか」 「そう言うものなの。それで、話を戻すけど、こう言ってたんだよ。会長はオメガヘイトだから、僕のことが嫌いなんだって」  黙った向原に、上手いこと言うだろう、と篠原が笑った。呆れたように。 「あいつの母親がアレだからな、信憑性がいかにもある」 「成瀬が泣いて喜びそうだな」 「むしろ、ブチ切れんじゃねぇか。そういや、それも最近見てねぇな。平和になった証拠と言えば、そうだったんだろうけど」  中等部のころは良くあいつも暴れてたもんなぁ、と続いたそれに、そう言えばそうだったな、と思い出す。  あのころは、確かに学内が荒れていた。そして、平定しようとしていたのが成瀬だった。  最後に無茶をしていたのはいつだっただろうかと考えて、すぐに思い当たった。榛名だ。  あの一年が中等部に入ってきてすぐのころ。襲われていたのを、頼まれてもいないだろうに助けに行っていた。  きっと、考えてもいないのだろうな、とそのときに悟った。この男は自分が捕食される側になるなど頭の隅にも置いていないのだと。  今回も、そのつもりなのだろうか。 「馬鹿馬鹿しい」  吐き捨てる調子だったそれに、「本当にな」と篠原は同調した。向原が想像したものとは全く違うものがその頭には浮かんでいたと思うけれど。

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