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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 6-10
「また、おまえは……。そうやっておまえが甘やかすからだぞ」
「甘やかすって、そんなつもりはないけど」
「甘やかしているだろう。昔から」
呆れ切った調子で断言されて、成瀬は小さく笑った。茅野の言うところの「甘やかし」をよく思っていなかったことは知っている。
たしかに、アルファから見れば、自分はベータを甘やかして庇っていたのかもしれない。けれど、それも自分にとって有益だったからしていたことだ。
「そんなことないって」
今だって、そうだ。恩義を感じている人の良さを利用して、楓寮内のことを聞いていただけ。目立つタイプではないからこそ得ている情報というものは、案外とあるものなのだ。
「あぁ、まぁ、でも、さっきのこそこそしてる、だけど。おまえのことが怖いってのもあるんじゃない?」
「俺のどこが」
「って胸を張って言う気があるなら、せめて高等部に入ってから出会ったやつに限定したほうがいいと思うけど」
覚えはあったらしく、それ以上の反論はなかった。バツの悪そうな顔を見つめてから、成瀬はふっと笑った。
「そうやってせっかく落ち着いてたのに、一年生脅したんだって?」
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