606 / 1072
パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 7-3
「あ、……お疲れ様です」
座ったままぺこりと頭だけ下げると、篠原が、「あ」という顔をした。自分の存在を忘れていたに違いない。
「皓太もお疲れ。ごめんな、いろいろ任せて」
帰ってくるまでのあいだにも散々言われていたのではないかと思うのだが、続いて入ってきた成瀬はまったくいつもどおりの調子だった。
労わるようなほほえみひとつで篠原の横を素通りして、生徒会長の椅子を引く。
「いや、その、……大丈夫です。向原さんも手伝ってくれたので」
「向原が?」
ほんの少し意外そうに自分たちのほうを見やっていた瞳が、にこりと笑む。苦々しい顔で立ち尽くしている篠原が気の毒になるくらいには、いつもどおりだ。
「そっか、よかったな」
「よかったな、じゃねぇよ」
言わないと気が済まなかったのか、あるいは、自分がいても言えるレベルの内容に落としたのか。判断はつかなかったが、入ってきたときの勢いはない声が、言い聞かせるように苦言を呈している。
気になってしまって、皓太は耳をそばだてた。
「成瀬、おまえ最近いろんなところで敵つくりすぎ」
「べつにつくってないし、間違ったこと言ったつもりもないけど。生徒会長として言うべきことを言っただけ」
「言い方考えろって言ってんの。おまえ、うまいだろ、そういうの」
ともだちにシェアしよう!