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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 7-9

「おまえ、そこは嘘でも、似非くさい笑顔じゃなくて本心で笑ってる顔が見たい、くらいのマイルドさを持てよ。皓太いるんだし」 「嘘でもって」  思わずこぼれた呟きは無視されて終わった。 「一番発露しやすい感情って、怒りだろ」 「いや、そういう話でもねぇし。というか人に寄るだろ、それは。俺、絶対『笑う』が先に出るわ」 「おまえはそうかもな」  根明だから、とさも当然と向原は応じている。そういう問題なのだろうか。脱線していく話を横目に、皓太は完全に止まっていた手の動きを再開した。  ――怒ってる、のかな。これ、やっぱり。  篠原が、ではない。向原が、だ。直接的な話なんてなにも聞いていないから、とりあえず表面上は仲直りしたというていを取ったのだろうと理解していたのだが。  気になってしまって、もう一度向原のほうに目を向ける。変わらない一見静かな表情を見つめたまま、皓太は少し前に茅野と話したことを思い出していた。

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