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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 7-11

「目に余るで言えば、まぁ、成瀬もなんだがな。本当にあいつはなにを考えているんだか」  やはりそれもなんでもない調子だったのだが、隠しきれないものがにじんでいた。思い返しても、気の毒だったな、とは思う。 「……ですね」 「おまえも聞いていたんなら、わかるだろう。いっそ感心したぞ、俺は。よくもまぁ、あの大事な契約を悪徳訪問業者みたいなやり方で押し売りするものだと。一生の契約じゃないのか。それをなんだ。使って飽きたら返品オーケーみたいな軽いノリは」  一息に捲くし立てられて、乾いた笑い声を立ててしまった。相当溜まっていたんだろうなと思うし、自分があの立場だったら、そう思うだろなとも思う。 「いや、でも、安心しました。その、……なんというか、茅野さんがまともな感覚で」  としか言いようがなかったのだが、「あたりまえだ」と言ってのけられてしまった。 「まぁ、なんだ。あいつも、その俺を選ぶあたり、最低限まともだったんだろう」  安心させるようにそう苦笑してから、「それで?」と茅野が問いかけてきた。 「おまえが聞きたいのは、なんで向原を選ばないのか、という話か? それとも、そのあとの『話し合い』のほうか?」

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