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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ Φ-3
――おまえ、本気で潰せると思ってたのか?
そう言って笑った風紀委員長の顔は、完全に自分を馬鹿にしたものだった。
――おまえには無理だ。器じゃない。
――器じゃない?
――ま、今までおまえが好き勝手できてたのも、あいつが本気で潰す気がなかったからってだけだしな。
じゃあ、なんだ。今まで僕は手のひらの上で踊らされていただけで、あの人が本気になったら僕は敵わないとでも言いたいのか。
内心でそう詰りながらも、水城は黙って続きを待った。そこが風紀委員会室だったからだ。自分以外にいるのは、風紀委員だけ。
――べつに、うちの人間を使いたけりゃ好きにすればいい。おまえに協力したいっていうやつがいるならな。
あれだけ抱かせてやっていた男は、その話の最中、一度も水城のほうを見なかった。気まずさを隠しきれない顔で視線を自分から逸らしている。
あれだけ好きにさせてやったのに、つがいになるかとまで聞いたくせに、ふざけるな。
けれど、ここでその感情を爆発させることを、水城のプライドは許さなかった。
だから、天使の顔でほほえんでやったのだ。
――そうですか。今までありがとうございました。大切なお部屋を貸していただいて。
今に見ていろ。呪文のように、そう念じながら。見ていろ。今に見ていろ。そうやって、ずっと這い上がってきたんだ。まずは、あの嘘吐きを楓寮に居られなくさせてやる。
僕は、僕を見下していた連中をすべて跳ねのけて、ここまで来たんだ。おまえたちとはちがう。なにもかもがちがう。オメガのおまえが陵になんて入れるのかよ、と馬鹿にされても、金もないくせに、と笑われても、負けなかった。
だから、こんなところで、負けるわけがない。苦労知らずの、金持ちのアルファなんかに、負けられるわけがない。
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