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閑話「夜の食堂でごはんを食べる話」③

 ――俺、もしかしてホームシックなのかな。  家を出たときは、絶対にそんなものにはならないと思っていたのに。そのショックを誤魔化すようにして話しかける。 「成瀬さん……は、どうして」 「あぁ、あんまり大きな声で話すようなことでもないんだけど、わりとふらふらしてること多くて。いつものことと言えばいつものことかも。皓太にも内緒な」 「部屋嫌なんですか?」 「ううん。部屋が嫌ってわけでもないし、同室のやつと相性が悪いってわけでもないよ。でも好きなんだよね、夜の寮。昔と違って静かだし」  昔は静かではなかったのだろうかと思っているうちに、冷凍庫を覗いていた成瀬が顔を上げた。 「いまさらだけど好き嫌いとかアレルギーとかある?」 「あ、……えっと、どっちもないです。あの……」 「そっか。じゃあきつねうどんにでもしよっかな。十分くらいでできるし。食べれる?」 「大丈夫です、でも、あの」 「ならよかった」  遠慮しようとするタイミングでいつも彼がにこりと笑うものだから、流されに流されてしまっている。  ――でも、いいのかな、本当に。 「あ、篠原のだ。まぁいっか。借りよ」 「え」  篠原というのは、もしかしてあのやたら明るい髪の先輩のことだろうか。おまけに先ほど「駄目なやつには名前が書いてある」と言っていなかっただろうか。  鍋を持ったまま固まった行人に、成瀬が大丈夫というように言い足した。

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