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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 8-2
「おまえだろ? このクラスだって聞いたんだけどな。喋れないのか?」
成瀬や茅野といった、同じ寮で接してきたアルファの最上級生とも違う、威圧的な雰囲気。思い出しそうになったのは、あの夜のことだった。
竦みそうになる身体を叱咤して、頷く。怯えていると思われたくなかったからだ。
あれ、風紀の三年生だよ。委員長。本尾先輩。ひそひそとしたクラスメイトの囁きに、行人は自分の前に現れた人の正体を知った。
――でも、なんで……。
どうにか頷いた行人を、あからさまにじろじろと見下ろしていたその人が、「へぇ」と笑った。完全に馬鹿にしたそれで。
「あいつ、案外、こういうふつうのが好きなんだな」
「あいつって……」
「おまえのとこの会長様だよ。あいかわらずの好き勝手で、三人も追い出してくれやがって」
なんでこの人がここに来たのか、なにが言いたいのかもよくわからなかったけれど、成瀬のことをよく思っていないということは、その口ぶりから十分に伝わってきた。
目立つ人だ。良く言う人もいれば、悪く言う人だっているだろう。それだけのこと。そう言い聞かせてみたものの、悶々としたものは消えなかった。
そもそもとして、成瀬が追い出したわけではないはずだ。そんなことが一生徒にできるはずもない。だから、ただの言いがかりだ。
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