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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 8-10
「違う、違う。褒めてんの。そういうふうに思えるほうが平和でいいよなって」
「平和……」
やっぱり馬鹿にされている気しかしない。むっとした行人に、「だから褒めてるんだって」と宥める調子で繰り返してから、高藤はこう続けた。
「ちなみに、俺はね、今まで天狗になって気づいていなかったことに気づいたんだと思うよ」
「気づいた?」
「前に、楓寮のこと言ったでしょ。あれだけ好き勝手できてたのは、トップのアルファが許してたからで、不満を持ってた特定層はいたんじゃないかって。基本的にはそれと同じ話なんだけどね」
「あぁ、……うん」
「この学園の多数派はアルファじゃない。ベータだ」
少し間を置いてから、そうだな、と行人は頷いた。そうだ。どうしても目立つから、アルファが多数派のように見えるけれど、実際の比率は圧倒的にベータが多い。
「そのことを、良くも悪くも成瀬さんたちはわかってた。そこの差を埋めないと対等に争えないってわかったから、挽回しようとしてるんだよ。それだけ」
本当にそれだけのことだというような、淡々とした言い方だった。水城のことをどう思っているのか、聞けばすぐにわかるような。
「信頼してもいない人の言葉ひとつで、人間が変わるなんてことはない。榛名があの人の言葉に心を動かされるのは、榛名があの人を信じてるからだよ」
そうだとするのなら、今の自分が必要以上に苛立つことなく高藤の話を聞けるのも、すんなりと同意できるのも、自分たちの距離が縮まったからなのだろうか。
――まぁ、信頼できるやつではあるよな。
そのことを、疑ってはいない。会ってすぐのころならまだしも、今となっては。第二の性のことを打ち明けることを渋ったのだって、巻き込みたくなかっただけなのだ。
結局、巻き込んでしまっているわけだけど。
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