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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 8-11

「だから、榛名には先に言っておくね」 「え?」 「水城の相手は、俺がするよ」  え、ともう一度声が漏れた。そんなことを言われるとは思っていなかったし、それに――。 「なんで。だって……」 「成瀬さんにしてもらったんじゃ、意味がないんだ。あの人たちが出て行ってからもここに残るのは、俺たちなんだから」  おまえ、そういうの好きじゃないじゃん。そう続けようとしたのを遮って、高藤はそう言い切った。  言っていることは、わかる。成瀬に甘えすぎるわけにはいかないというのもわかる。でも、中等部での三年間、高藤は権力を握れるような位置にいても、力を持っていても、そういったふうに使うことは絶対になかった。  また、自分のためにさせてしまっているのではないか、と思うのは、さすがにうぬぼれがすぎるかもしれないけれど。でも、言うつもりだった台詞の続きは、結局口にできなかった。 「だから、俺がする。榛名は……、なんだかんだ言って甘いから、嫌だと思うときもくるかもしれないけど」 「甘いって。そんなことないだろ」 「だって、もっと怒っていいと思うのに、榛名、ぜんぜん水城のこと怒らないから」 「そんなこともないと思うけど」  思い当たる節がなくて、頭をひねる。現にみささぎ祭の前にも一度、人前で余計なことを言って喧嘩を売っているし、そのあとにもやらかしている。  結果としてどちらも高藤に迷惑をかけたような気がするし、あまり相手にしないほうがいいという忠告もそのとおりだと思ったから、受け入れたのだ。  そのあとのことは、正直なところ、自分のことにいっぱいいっぱいで、水城に対して「怒る」ということにまで気が回っていなかったというほうが、たぶん正しい。

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