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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 8-13
――おまえがいいやつじゃなかったら、この世にいいやつなんていないだろ。
自嘲するような雰囲気がどこかにあったのが、気にかかったのかもしれない。けれど、気がついたときには、その言葉は勝手に零れ落ちていた。
「手伝う」
驚いた顔をされてしまって、行人は取り繕うように言い募った。拒絶されたくなかったのだ。
「たいしたことはできないけど、手伝いたい。だから、ひとりでそういうふうに背負う必要はないし、これからも話せよ、今みたいなこと」
言っているうちに、どんどんと言葉に力が入っていく。そうだ。なにもひとりでやる必要なんてない。背負う必要もない。たしかに、水城の相手をできる同学年の人間なんて、高藤くらいしかいないかもしれないけれど。でも、だからと言って、すべてをひとりでどうにかしようとなんてする必要はないはずだ。
「それに、なんでも先回りで、ひとりでやられるほうがよっぽど嫌だ」
すべてが終わってから、「はい、これでもうここは安全ですよ。安心してあなたでも暮らせますよ」と告げられても、なにもうれしくない。
だって、ここは、誰かひとりのものではないのだから。自分たちが、積み上げていかなければならないのだから。
「そうだよな」
じっと話に耳を傾けていた高藤がそっと苦笑を浮かべて、頷いた。自嘲気味だったものではない、穏やかなそれで。
「俺も、そう思う」
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