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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-1
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実際の年齢よりも落ち着いている、だとか、大人びている、といったようなことは、昔から数えきれないほど言われてきた。
けれど、それは、生来の気質というよりかは、後天的な環境要因のほうが大きかったのだろうと皓太は思っている。物心ついたときの一番身近だった遊び相手は、ふたつ年上の幼馴染みで、学校に通うようになってからも、同級生よりも幼馴染みの遊び仲間に入れてもらうことを好んだ。
そんなふうだったから、同級生の幼さを遠巻きにしているようなところが自分にはあった。波風を立てないように最低限のコミュニケーションは取っていたから、人間関係で困った記憶はないけれど。
だから、きっと、小器用な子どもだったのだと思う。
この年になって思い返してみるに、かわいげのない子どもだったなともわかるし、よく成瀬は嫌な顔ひとつせず自分たちの輪に入れてくれていたなとも思う。
それがあの人のやさしさだったというのなら、そうだったのだろうし、自分はずっとかわいがってもらっていて、だから、ずっと近くにいた。
時間の長短だけでいうなら、この学園で、あの人と一番長い時間を過ごしているのは自分なのだろう。ずっと彼のうしろから、彼が紹介してくれる世界を見ていた。
だから、彼が見せたいと思っているものしか、自分は見ていなかった。それが、世界のすべてだと信じていた。
「高藤くんと荻原くんは、署名してくれないよね」
昼休みの終わり際に教室に戻ってきた水城は、連れ立っていたクラスメイトと離れると、自分たちのほうに近づいてきた。その手には分厚い紙の束が握られている。
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