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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-2

「ふたりとも櫻寮だもんね。やっぱり、先輩たちは怖い?」 「あ、……そういうわけじゃないんだけど」  寂しそうな顔に罪悪感でも刺激されたのか、とってつけたように荻原がほほえんだ。基本的に、平和主義なのだ。 「えっと、その、ハルちゃんは、どうしてそれを集めてるの?」 「どうしてって……。うん、そうだなぁ」  手にしていた署名簿の束をとんとんと机で整えながら、水城が首を傾げる。 「今が正しいとは思えないから、かな」  あくまでも、自分の正義感からくるものだといった調子だった。 「僕は、みんなと違って、この学園に高等部から入ってきて……、それで、荻原くんも高藤くんも、中等部からここにいるでしょ。だから、あたりまえに思ってるのかもしれないけど、僕にはここは違和感だらけに見えることがあるんだ」 「違和感?」 「そう。会長を批判してるわけじゃないんだけど、あの人の一存でここは動いてるように見える。……それって、本当にいいことなのかなって」 「あのね、ハルちゃん」 「わかってるよ。会長は悪い人じゃないんだろうし、荻原くんにとっても、ここはいい学園なんだよね。荻原くんはアルファだし、櫻寮だし、なんの不利益も被ってないよね」  荻原が口を挟もうとするのを遮って、水城は「でもね」とまっすぐに訴えた。

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