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パーフェクト・ワールド・レインⅤ-8

 足早に向かいながらも、皓太はしっかりと成瀬を見ていた。見定めるように。 「どうせ、祥くんは知ってるんじゃないの」 「俺から言えることじゃない」 「それって、ほとんど言ってるようなもんじゃん。もう本当に性質悪いなぁ!」 「性質が悪いついでに聞くけど、それを理解したうえで、皓太はどこまで着いてくるんだ?」  苛立たしげな声を窘めるでもなく、静かに問いかける。  皓太に言っても良いんじゃないか。先日、行人に助言したのは自分だ。行人は気が付かれているわけがないと思っていたようだけれど、そうではないと成瀬は思っていた。  ただ、決定打を探し出そうともせず、気が付かれたくないのなら、と。行人の意に沿って見て見ぬふりをしていただけだ。  そういう人間もいると言うことを、知っている。 「っ、最後までだよ」  やけくそのように答えて、皓太が息を吐いた。 「祥くんを頼っておいて言う台詞じゃないと思うけど、放っておけない」 「いや、おまえは正しいよ」  自分でできるラインを冷静に把握して、必要な助けを呼べる。それができる人間は、失敗しない。 「なぁ、皓太」  本人の口から聞いたわけではない。けれど、問題が生じたのは、おそらくあの日からだ。 「行人、最近ちゃんと薬は飲んでたか」 「知らない」 「皓太」  硬い声に、もう一度、名前を呼ぶ。少しの躊躇いの後、応えが返ってきた。 「知らないけど、あの日以来、……何か盗られたんじゃないかって話があった日以来、あいつ、朝早くにどこか行かなくなった」  やっぱり知っていたんだな、と成瀬は思った。知っていて、黙っていてやったんだろう、誰にも気が付かれないように。 「だから、そう言うことじゃないかな。俺に隠れて飲んでなかったと思うよ」

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