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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-4

「水城だけじゃない?」 「うん。僕だって最初はよくわからなかった。言葉にできなかった違和感を教えてくれたのは、三年生の先輩たちだよ」  だからそれが正しいのだというような、まっすぐな調子だった。 「あの人たちのしていることは、結果として上に出たいアルファへの弾圧だって」  抑圧って言ったほうが正しいのかな、それはわからないけど、でも、と水城が続ける。 「それを聞いて、僕、納得したんだ。だって、アルファもベータもオメガも平等だって、おかしいでしょう? アルファの人たちが上に立つことで、この世界は回ってるのに。平等がいいだなんてきれいごとで、その摂理を捻じ曲げてる。おかしいって思う人が出てくるなんて、あたりまえじゃないのかな」 「ハルちゃん」  そのくらいで、という荻原の制止なんて耳に入らないような態度で、水城は言い切った。 「もし今までそのあたりまえの声が薄かったっていうなら、それこそ生徒会側の弾圧だと僕は思う」 「それは極論だと思うけど。そもそもとして本当にあの人たちが弾圧をしたいなら、水城の同好会も許可されなかったと思うよ」 「うん。そうかもしれないね」  にこ、とまた水城はほほえんだ。 「でも、最低限、自分たちはルールを守ってるんですっていう意思表示だったのかもしれないよ。現に、僕は、許可はされたけど歓迎されているとは感じなかった。部屋もなにも用意してもらえなかったしね」 「それは……」 「年度途中で部屋がなかったって、言い訳だと思うんだけど。違うかな。そういった部屋の調整も、生徒会がしてくれてもいいよね。自分で部室も用意しろって、すごく上からじゃない? ……まぁ、ありがたいことに本尾先輩が使っていいって言ってくれたから、僕は大丈夫だったけど」  僕じゃない人だったら、すごく困ったと思うんだよね、と周囲を慮るように呟く。そうしてから、皓太に向かってふっとまたほほえむ。

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