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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-8
「どういうこと? 荻原くん」
「俺、みささぎ祭のとき、会長の準備手伝ってたんだけどさ、貴重品預かったときにバラまいちゃって。そのときに見えたんだけど、IDアルファだったよ」
十分すぎる理由だよね、と荻原が言う。まぁ、結果的に勝手に見ちゃったわけで、褒められたことじゃないんだけど、でも、と。
「だから、思い込みであんまりそういうふうには言わないほうがいいと思うよ。誰にでも間違いはあるけどさ、でも、間違った噂でも一回広がっちゃうとなかなか消えないから」
ね、と宥めるように荻原がほほえむ。
「それと、――これは、俺の考えだけど。バース性ってそんなに大事かな。絶対に隠さないといけないものでないことも事実だろうけど、絶対に公表しなきゃいけないものでもないよね。だったら、公表してない人のものを噂したり、探ったりするようなことはしないほうがいいんじゃないかな」
「僕は、自分の性を恥ずかしいなんて思わないから、隠さなかったんだよ。みんなもそうじゃないのかな」
「みんながどうかは俺はわからないよ。でもみんながみんなハルちゃんと同じ考えではないんだと思うよ。第二の性を公表したくなかったんだって思ってた子のことも、俺は知ってるし」
誰のことを指しているのかは明白だった。水城も、「あぁ」といったふうに頷く。
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