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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-11

 先ほど自分の考えを述べていたときと同じ、自分は正しいと信じて疑っていない調子のまま、水城は笑みを深める。 「僕はね、求められたら天使にもなるし、悪魔にだってなれるよ」  しんと静まり返った教室に、小さな失笑が起きる。水城と一番近しい取り巻きだった。 「よかったの、ハルちゃん。その性格ここでバラして。もう少し天使のままで行くんだって言ってなかった?」 「いいに決まってるじゃない。だって、この性格でも、きみは、僕のことが好きでしょ? 女王様みたいで、こっちはこっちでいいって言ってたくせに」  ほかの人も同じだよ、と水城は楽しそうに肩をすくめる。 「これもギャップっていうのかな。オメガらしい従順で可憐な僕が好きだって言う人もいれば、こういう傲慢な僕が好きな人もいるんだよ。本当、おもしろいよねぇ、人間って。でも、高藤くんだってそうじゃない?」  ハルちゃん、ともう一度制止しようとした荻原の声を振り切って、水城は笑顔で言い放った。 「オメガなのに、オメガじゃないって言い張ろうとする強情な人間が好きじゃない。そっちにばっかり肩入れする。それと一緒。――あ、そうだ。でも、僕、ひとつだけ不思議なことがあったんだった? 聞いてもいい?」

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