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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 9-12

「なに?」  感情を抑え直して、皓太はそう問い返した。人の感情を弄んで喜んでいるのだということだけは、よくよくわかったからだ。 「オメガだからかなぁ、僕ね、すごく鼻がいいんだ。でも、やっぱり言わないほうがいいのかな」  ふふ、といかにももったいぶったふうに、水城は笑みをこぼした。その態度に、嫌な予感がゆっくりと膨れ上がっていく。悪いとは思うけれど、成瀬のことだったらまだいい。でも――。 「だって、もしここで僕が言っちゃったら、櫻寮が考えたシナリオが台無しになっちゃうもんね。それに、かわいそうかなぁ、とも思うし」  試すような言い方を選んで、荻原のほうにもちらりと視線を向ける。 「さっき荻原くんも言ってたけど、噂ってすぐ駆け巡っちゃうし。僕にそんな気がなくても、学園中に広がっちゃうかもしれないし」 「広がっちゃうって。だからハルちゃんそういうことは……」 「まぁ、でも、今、言っても言わなくても同じことかもね。次は絶対に来るんだから」  そのときにはどうしたって、みんなが知ることになるんだから、とも水城は言った。さらりと、なんでもないことのように。

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