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パーフェクト・ワールド・レインⅤ-11
教室内には六人ほど制服姿があった。誰かを取り囲んでいる集団と、そこから距離を置いて教卓に腰かけ、悠々と見下ろしている男。
「本尾、おまえ……!」
「そんなに怖い顔すんなよ、会長。折角の美人が台無しだ」
むせ返るような、甘い、甘い香り。輪の中心にいるのは行人だ。
「校内の風紀を守ってやってるだけだろ? それとも良いのか? ヒート状態のオメガをアルファだらけの場所で放置して」
「おまえらもだろうが!」
本尾を筆頭に権力を振りかざす風紀委員たちは、アルファが多い。吠えた成瀬を本尾は笑い飛ばした。
「おまえもだろ、会長サマ」
アルファを惑わすフェロモン。その香りが充満したここは異空間だった。
「それに、俺たちはただ親切心で隔離してやっただけだ。まぁ、相手してやったのは、単なる優しさってやつだ。言っておくが、先に手を伸ばしてきたのは、そいつだぞ?」
嘲笑を無視して、群がっていた一人の肩を掴んで押しのける。誤魔化しようのないほど、頭の芯がぐらぐらと揺れ始めていた。誰かのフェロモンをこれだけはっきりと感じたのは初めてだった。
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