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パーフェクト・ワールド・レインⅤ-12
「成、瀬さ……」
弱弱しい声は、どこか熱を孕んでいる。座り込んでいる行人の顔は赤く息遣いも荒い。けれど。
――間に合った、か。
間に合った、と一概には言えないかもしれないが、最悪の事態だけは避けられたようだ。乱れた服装を直してやりたかったが、触られるのも辛いはずだ。ブレザーを脱いで頭から被せてやって、膝を着く。
「立てる?」
問いかけに、布の下で頭が横に揺れる。だろうな、と諦めて、膝の裏に手を入れてそのまま抱き上げる。小さく漏れた声と震えは気が付かない振りで、静観している風紀委員の脇をすり抜ける。そのまま外に出ようとしたところで、笑いを含んだ本尾の声が届いた。
「勝手に連れ出すんじゃねぇよ。それとも、おまえのつがいだとでも言うのか」
「この学園にいる間は、オメガもアルファも関係ないはずだ。今までだってそうだったはずだ」
「それが、あの新入生のせいで覆されたとでも言いたいのか? 落ちたもんだな、てめぇも」
水城の所為ばかりではない。そもそもとして、そう言う問題ですらなくなっている。自分の身内に手を出されることを許せるほど、成瀬は人間が出来ていない。声の主を振り返って、言い放つ。
「うちの寮生で、俺の後輩だ」
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