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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 10-2
「ちなみに、なんで話聞けないの?」
「なんでって」
話をすり替えたわけでもなく、純粋なる疑問だったのだが。四谷は、戸惑ったふうに唇を尖らせた。そうしてから、自分たち以外は誰も残っていない教室に視線を巡らせる。
「だって……、高藤、俺のことそんなに好きじゃないと思うし。聞けないって」
「……」
「それに、高藤がそういうことするってよっぽどだったんだと思うから、心配だし気になるけど、でも、だから、迂闊に踏み込めないっていうか」
「四谷って」
本当にあいつのこと好きなんだな、と言いかけたところで、行人は慌てて言葉を止めた。
仮にも、そのあいつと付き合っていることになっている自分が言えた台詞ではない。寂しげな四谷の横顔から、行人は視線を外した。机に置いた手の甲は、窓から降りかかる夕日でオレンジ色に染まっていた。
寮に戻って聞いてみれば、とは言ったものの、この時間帯だと、高藤はまだ生徒会室にいるかもしれない。
「四谷って、本当に高藤のこと好きだよな、とでも言いたかった?」
「……その」
顔を上げられないまま、行人は唸った。まさにそのとおりだったからだ。項垂れていると、ふっと小さく四谷が笑った。
「いいよ、事実だし。榛名ってデリカシーないしね」
「ごめん」
「だから、べつにいいって」
もう一度諦めたように苦笑して、四谷が一度黙り込んだ。遠くのグラウンドで練習している運動部の声がかすかに響いている。四谷が気を悪くしているふうでもない現状が余計に居たたまれなくて、行人は外に意識を向けていた。
だから、四谷が思い切るような表情を見せたことに気づかなかった。
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