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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 10-8
――でも、あたりまえだけど、そのころって、もう、成瀬さんは「会長」じゃないもんな。
それどころか、春になれば三年生はみんないなくなってしまう。
「高藤、生徒会のほうはちゃんと行ったのかなぁ」
すっかりいつもの調子に戻った四谷が、生徒会室のある棟を振り返った。つられて行人も視線を向けたが、当然ながら中の様子は見えない。明かりがついているようだったから、誰かしらはいるのだろうけれど。
「なぁ」
ふと思いついて、行人は問いかけた。
「ん、なに」
「四谷は、高藤と成瀬さんって似てると思う?」
「あー……、それ、よく言う人いるよね。でも、俺、あんまり思ったことないんだ」
あっさりとそう答えてから、取り繕うように四谷は言い足した。
「まぁ、会長は俺にとって遠い人だからっていうのもあると思うんだけど、俺にとっての会長って、ちょっと怖いんだよね。もちろん優しい人だっていうのはわかるけど」
「うん」
「でも、高藤を怖いって思ったことは一度もないよ」
「……うん」
「完璧超人なんかじゃないって、俺だって知ってる。――だからさ、榛名。ちゃんと話聞いてあげてよ。高藤が授業さぼるなんて、やっぱりよっぽどなんだよ。俺には話せなくても、榛名にだったら、きっとちゃんと話してくれるから」
うん、と三度行人は足元を見つめたまま頷いた。胸にあるのは、試すようなことを聞いてしまったという罪悪感だ。
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