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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 10-11

 高藤が顔を出していたのなら、生徒会室での様子はどうだったのか、ということも聞いてみたかったのだけれど。でも、それもぜんぶ口実だったのかもしれないと思えてきてしまった。  整理しきれないでいる自分の感情を、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。 「その……」 「場所、変える?」  口ごもった行人に、そう成瀬が提案する。 「話が聞かれたくないだけで、俺とふたりでいるのを見られて困るっていうわけじゃないんだったら中庭でもいいし、べつに俺の部屋でもいいし」 「あ……えっと、ここで大丈夫、です」  呼び止めておいていまさらかもしれないけれど、必要以上に手を煩わせたいわけでも、時間を取りたいわけでもないのだ。  それに櫻寮の前で話していて、困るようなことではないつもりだった。とは言え、玄関の前を占領していては邪魔だろうから石段を下りて、少し場所をずらす。  そうしてから、やっと行人は口火を切った。自分の考えていることを誰かに伝えることは、行人は決して得意ではない。すぐに意地を張ってしまうからだ。弱音を見せるようで、だから、高藤にも絶対に言えなかった。 「話したいことっていうか……」  意地を張りがち、というところは、四谷も自分も似た部分があるとも思う。だからこそ、その四谷が自分にあんなふうに吐露するなんて意外で、それも言い訳かもしれないけれど、気の利いたこともなにも言えなかった。  ――っていうか、言えないどころか、俺のほうが慰められてた気がするし。 「ちょっと、なんというか、すごい自己嫌悪で。……いや、自己嫌悪っていうのとも違うかもしれないんですけど」

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