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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 10-12
話し始めてはみたものの、物の見事になにひとつとしてまとまっていない。急かすようなそぶりは成瀬は見せなかったけれど、申し訳なさがまたむくむくと膨れ上がってくる。
「すみません、まとまってなくて」
「気にするようなことじゃないよ」
「でも……」
「報告聞いてるわけじゃないんだし、相談なんてそんなものだと思うよ。解決策を見つけることだけが、相談することの意義でもないしね」
「そういうもの、なんですか?」
わかるような、わからないような気分で問いかけると、優しい苦笑が返ってきた。
「行人は真面目だから、相談したらちゃんと解決策を返さないといけないって思うのかもしれないけど、話すだけで楽になることもあるんじゃないかな」
四谷もそうだったのだろうか。高藤に言うつもりはないから、と。でも、聞いてもらってちょっとすっきりした、と。そう別れる前に言っていたのは。
そうだったらいいけど、と暗くなってきた空をちらりと仰ぐ。寮の敷地内だということもあるけれど、この人とだったら心細さも怖さも感じない。それはもうずっと、はじめて会ったころからそうだった。
「俺、友達ってあんまりいないんです。っていうか、いらないとも思ってたんですけど、でも、ちょっとその気持ちも変わってきてて」
「うん」
「やっぱり、なんでもないこと話せるのもうれしいし、心配されるのも嫌いだったけど、嫌なだけなものじゃないっていうこともわかったし」
心配されるということは見下されていることだという図式が、どこかにあった。アルファの多い学園で周囲を必要以上に警戒していたから、そんなふうに思うようになったのだと思う。
でも、自分のことを気にかけてくれている人がいることも、少しずつではあるけれど、素直に受け入れるようになった。
成瀬たち三年生はそうだし、高藤もそうだ。高藤なんて特に、最初のころは心配されるだけで苛々して仕方なかったけれど、それでもゆっくりと変わっていった。そうして、四谷も。
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