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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-2

 誰もいないと思っていた教室にひとり居残っていた荻原は、勉強で時間を潰していたらしい。手を止めて顔を上げた荻原が、人当たりのいい笑みを浮かべた。 「いや、まぁ、待ってたっていうか、鞄どうしたもんかなと思っちゃって」 「あ」 「六限目には戻ってくるって言ってたのに戻ってこないし」  鞄の存在なんて、言われるまですっかり忘れていた。が、逆の立場だったら自分も気にして帰れなかったと思う。 「ごめん、ちょっと戻りそびれて」 「いや、いいんだけどね。勉強してただけだから。寮に戻ったらよっちゃんあたりに絡まれそうだったっていうのもあるし」  そのあいだになにをしていたのか、という説明を省いた謝罪をさらりと流してから、「それと」と荻原が少し申し訳なさそうな表情をつくった。 「実は、もしかして生徒会室にいるのかなと思って、鞄持って生徒会室のほうまで行っちゃって」 「あ、……そうなんだ」 「どうしたのって聞かれたから、余計なこと言ったかも、ごめん。べつに会長怒ってはなかったと思うけど」 「ああ、いいよ、それはぜんぜん。むしろ手間かけてごめん」  というか、あの人、俺のこと怒れるような品行方正な生活態度じゃないし、との事実は呑み込んだまま、皓太は苦笑いを浮かべた。  遅かれ早かれ伝わっていただろうとも思うし、本当に気にしてはいない。あの人たちは、ちょっとどうなのかと思うくらい、この学園の情報を把握しているのだ。  情報源を自分に言わないあたり、ろくでもない方法が混ざっているのだろうと皓太は踏んでいる。

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