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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 11-9

 また無意味に悶々としてしまいそうな自分に気づいて、素知らぬ顔を保ったまま部屋のドアを開けた。当然、榛名もそのあとについてくる。鞄を置いたところで、となりの机の散らかりように目が行った。  いつもならもう少しきれいに整えているのに、すべてが中途半端に散らかったままだ。まるで慌てて飛び出したみたいに。 「なに、おまえ。もしかして成瀬さん見て飛び出したの?」  ここの窓からは、校舎から寮に続く道が見える。合点がいってそう問いかけると、バツの悪い顔を向けられてしまった。 「そうだよ、悪いか」 「悪くはないけど、あいかわらずだなぁって思っただけ。そんなに話したことでもあったの?」 「……話したいことっていうか」 「べつに言いたくないなら、ぜんぜん。ただの世間話で聞いただけだし」  そう。そのつもりだ。だから、あくまでもなんでもない調子で応じて、鞄を片づけ始める。扉に背を預けたまま、じっと窺うようにしていた榛名が、おもむろに話しかけてきた。 「さっき、成瀬さんに、あんまりひとりにならないほうがいいって言われたんだけど」  予想していなかった内容に、視線を手元から上げる。 「どう思う?」 「どう思うって、俺がってこと?」  内容も意外だったが、どう思うと意見を求められたことも意外だった。思わず問い直してしまったのだが、榛名は「うん」と真面目な顔で頷く。

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